最期まで向き合う気持ち、それだけでいい|社会福祉法人親の家 特別養護老人ホーム「親の家」


2015-10-26 15.33.41

「テンミリオンハウス」というものをご存知だろうか。
市民団体や地域住民が行政から年間上限1,000万円の助成を受け、ミニデイサービスや喫茶、親子ひろば、世代間交流の場などを行う事業である。

「テンミリオンハウス事業」に力を入れているのは東京都武蔵野市。
そんな土地柄もあってか、家庭の雰囲気に溢れ、つい立ち寄りたくなる施設がある。
特別養護老人ホーム「親の家」
https://www.oyanoie.jp/about.html

木々に囲まれ自然を感じる外観、おじいちゃん、おばあちゃんの家に来たかのような懐かしさや温もりを感じる内観にも魅力を感じる。

施設長の江幡氏、施設長補佐の小川氏、介護主任の福江氏に話を伺った。

施設長:江幡氏
施設長補佐:小川氏
介護主任:福江氏

社会福祉法人親の家の始まりには地域との関わり、信頼があったから
江幡氏:私は「親の家」設立時に武蔵野市の行政で主に生活保護の仕事をしていたんです。
初代の理事長が地域に貢献したい!という想いと時の市長さんのお願いしたい!という考えがあって「親の家」の設立に至りました。
設立の際には最終的には関わることになり、時を経て平成24年から前任者の退職に伴い施設長になったんです。施設長になる前から副施設長として現場に足を運んだり、理事をしていたんですけどね。
矢澤:法人の立ち上げに尽力されたということで、施設長の依頼は頼みやすかったんでしょうね。行政、その他では福祉に関する仕事をされていたんですか?
江幡氏:福祉分は高齢者の他、障害者、介護など全部やってきました。
ですので、施設長になっての戸惑いはなかったですね。

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矢澤:小川さんは「親の家」で働くこととなった経緯や福祉に携わることになったきっかけをお聞かせいただけますか?
小川氏:「親の家」で働く前は他の法人で特養やデイサービス、訪問介護などの複合施設で介護職員、相談員として働いていました。
それから、「親の家」に移ってデイサービスで従事した後に今に至ります。
きっかけは、高校生の時に同居していた祖父が体調を崩して入院をしたんです。
住んでいた地域で病院で最期を迎えるという実情に違和感を感じたんです。
それに、入院していた時に家にいた時のような威厳が感じられなくなっていて、下の名前で看護師に呼ばれていたり、何時でも箸で食事をしていた祖父がスプーンを使っている姿が頭に残り、それがきっかけかもしれません。

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矢澤:なるほど、ご家族として感じる違和感や歯がゆさがあったんですね。江幡さんは前職は何かされていたんですか?
江幡氏:職業の出発は知的障害の施設の指導員なんです。だいぶ前ですけど。
友達に誘われて始めたんですが、そこでもの凄いカルチャーショックを受けました。
知的障害をもっている子供をみて、「こんなに純粋な子供がいるのか!」と。
それからいつも思うようになったのは、”人間の価値は何なのか”ということです。
自分はたまたま字が書けて、読めて、行動教育を受けてそれと障害のある人達と何が違うんだ!と。未だに答えを追い求めていますが。
高齢者介護で言えば、寝たきりであろうと、重度の認知症であろうと同じだと思います。
矢澤:当たり前の加齢や病気や障害、何であろうと違いは無いというお考えは私も強くそう思います。難しい考えかもしれないですが、そうでなくてはなりませんよね。
矢澤:これまでお二方の福祉に携わる経緯をお聞きしてきましたが、現場の声ということで介護主任である福江さん。介護主任となった経緯やお気持ちを聞かせてもらえますか?
福江氏:介護主任には最近なったばかりなんです。
そのポストが空いていたということもあるのですが、自ら申し出ました。
矢澤:自らその立場になるというのは、プレッシャーを自らかける部分はあったと思いますが理由はあったんですか?
福江氏:「親の家」は自分の介護感に合っていて、やりがいを持って仕事が出来ているのですが更なる成長の為にもと思いました。
矢澤:現場の職員さんが自らや施設を考えてらっしゃることは嬉しいと思いますよ。
永続的に利用者様、ご家族と向き合うこと

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矢澤:これまでの福祉への貢献や想いを強くお持ちの皆様ですが、「親の家」の良いところ、素晴らしいと思うところは何だとお考えですか?
江幡氏:私の父親は重度の認知症だったんですが亡くなるまでの最期を「親の家」で過ごしたんです。「親の家」の良いところは利用者さんを自由にしてくれる。管理することに重きを置かないところですね。
他にも地域の方にいつでも、誰でも来て頂け信頼してもらっている施設だと思います。
皆さんに気兼ねなく入ってきてもらいたいです。
福江氏:時間に追われる、作業的でなく利用者様と向き合って良い意味でゆっくりと介護をできる事ですね。
矢澤:どうしても時間や職員数もあって、慌ただしくなりがちですもね。小川さんはどのようにお考えですか?
小川氏:特に施設介護だと、俗に言う3大介護(食事・入浴・排泄の介護)に重きを置いて争うように「ケアをしています!」と謳いますが、それは当たり前だと思うんです。
介護を生活として捉えれば、利用者様が”夢を追える”ことが大事ですよ。
それにはリスクを伴わなければいけない場面もありますけど、リスクをおかす権利も介護者としてあると思います。
江幡氏:ケースバイケースで、個人の状況、個性を見極めていくのがプロフェッショナルですよ。私の父が亡くなる時、退院後だったんですが職員さん、利用者さんに囲まれてニコニコしながら間も無く死んじゃったんですけど、それだけで良いんです。
矢澤:リスクをおかす事への理解を得ることは非情に難しいことだと思いますが、利用者様にとどまらずご家族の心情にも真摯に向き合うことで、QOLの向上に繋がるんでしょうね。

02

組織を形成する職員に求めること
矢澤:介護の仕事が大変であることは周知の事実ですが、従事される方にはその仕事に「やりがい」「魅力」「楽しさ」などを感じてもらいたいものですが、個人として職員さんに求める要素としては何かございますか?
江幡氏:仕事以外にも没頭できることを持っている事は良いですね。
趣味でもなんでも良いんです。そういうことでオンとオフを区分して、英気を養ってまた仕事に邁進できると思うんですよ。
矢澤:確かに、趣味でもなんでも持っていることは重要だと思いますね。
介護は精神労働、感情労働の占める割合が大きいですからリフレッシュは必要ですね。
小川さんと福江さんはいかがですか?
小川氏:物事に興味を持って、考えることができる人、自分で調べようとする気概を持っていることが望ましいです。それが、自分の足元を固めて将来に繋がると思います。
福江氏:協調性のある人ですね。上から押し付けるとかではなく職員が連携する事は大事ですから。本当に介護の仕事をしたいという人には「親の家」は適していると思います。
矢澤:利用者様へのサービスが第一と考えることが介護の世界ですが、それには働く人の人間性や気持ちが無くてはサービスの向上にはなりませんからね。
矢澤:地域に根ざし、求められ始まった「親の家」ですがこれからも今まで以上に繁栄していくにあたり、伝えたい想いなどありますか?
福江氏:介護に従事する人は感性というか、特殊な素晴らしい能力があるんだと思います。
それをここは引き出して感じさせてくれると思うので、皆さんに来てもらいたいです。
江幡氏:人を差別なく”人”として向き合って接していくこと、その気持ちがあれば。
父親の話ではありますが ”最期まで向き合ってくれた” それだけで良いんです。

interview

interior

編集後記

生粋の福祉人と思える人とのお話に感銘を受けた。
人によっては「理想はそうだが・・・」と否定的な意見もあるかと思う。
しかし、理想を持たない現実ほどつまらないものはないと思う。
普通に「人」と「人」の関係を、「人」の想いを大事にすることが難しい世の中において語ってくれた3人のような「人」は絶対に必要である。
「親の家」で働くことは介護従事者としてのレベルアップだけでなく、「人」としての成長も期待できると感じた。

施設情報
施設名 特別養護老人ホーム「親の家」
交通アクセス JR中央線三鷹駅北口、関東バス2番乗り場「柳沢駅前行き」に乗車10分、「武蔵野中央公園」下車徒歩1分
西武新宿線西武柳沢駅南口、関東バス「三鷹駅行き」または「吉祥寺駅行き」乗車7分
「武蔵野中央公園」下車徒歩1分
住所 〒174-0063
東京都武蔵野市八幡町3-4-18
地図