外国からの風


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成田から3時間あまりで中国の東北地方の中核都市、瀋陽に降り立つ。気候は北海道の札幌あたりの感じだった。
街自体は、東京とよく似ており、車が行き交う5車線の道路に、ユニクロ、吉野家、H&M等が整然と立ち並ぶ。

今回旅の目的は瀋陽医学院(医療系公立の大学)の学生に日本の看護師事情を話すプレゼンをするためだ。
医学院訪問に先立って老人ホームや病院を観ておきたいという希望を出しておいたので早速見学させて頂いたのだが、繁華街より郊外のマンション建設ラッシュが続くほこりっぽい道を行くと老人ホームは正に想像したとおりだった。庭では高齢者が思い思いの衣装で体操をちょうど行っていた。皆一応にお元気だ。
想像したとおりというのは、「養老院」という名前であったが入居している高齢者は日本の養護老人ホームに該当する雰囲気だったという意味合いである。基本的に身辺自立している。身寄りがない、生活基盤の立たない高齢者を保護しているとの話だった。100人あまりの定員で、オムツをしているのはわずか10人足らずだという。
部屋は2~3人部屋、木枠のベッド約1畳分ほどの和式ベッドにわずかな物入れがある程度の造りだった。入浴室は大きな浴室の左右に固定式のシャワーがそれぞれ15本づつくらい、ついているだけのシンプルな構造だった。まるで刑務所のシャワール ームだった。

日本で問題になっている介護職のモチベーション低下の話題を投げかけたら、ここの職員は安定した仕事をしている(公務員)し、仕事もそんなに大変ではないから辞めるということはまずないとの返答だった。
身辺自立者が多いこのホームでは、重介護ということはまず考えられないし、職にあぶれている人民も多いこの街で公務員という仕事は絶対的安定なのであった。我が勤務先の特別養護老人ホームと比べる対象ではない。養護老人ホームか、救護施設あたりが日本では該当していると感じられた。
では本当に重介護の人たちは・・・どこで介護されているのであろうか。

そして次は郊外にある大学の附属病院を見学する。
7階だてのコンクリートの建物の中は昭和のレトロな造りだった。ギャッジのない硬いベッドに木造の床頭台、魔法瓶がセットされている。病院らしいと思えるところは酸素と吸引の配管があったところだと思う。使用している点滴は全て瓶。
ナースキャップを被った看護師たちがいる。各病棟には、医師並びに看護師の序列順の紹介が写真とともに並んでいた。北京あたりではついているという特級看護師を指名したら何元プラスの表示はなかった。
しかし1階の入り口にレントゲン検査何元、腹痛治療何元、というように診察内容にお値段がついたテロップが掲示されていた。こんな値段をみたら具合が悪いが帰ろうと思うくらいの値段だった。中国は医療保険制度についてもまだ十分に普及していない、お国柄である。医療もお金がなければ受けられないというのが現状だ。
病院側はサービスでICUも見学させてくれたが、感染予防着も手洗いも手袋もしないICUにはさすがに驚いてしまった。

今日本の看護師になろうとして日本語検定2級をほぼ中国内にいるうちに取得して、実際に来日し1級を取りながら日本の看護師国家試験を目指す学生たちが増えてきている。
彼女たちの大きな目的は、日本の最先端医療と中国では得られない高収入であることは間違いない。

EPAとは異なるルートで日本の看護師を目指す学生たちのエネルギッシュな勉学姿勢をみせつけられて、今の日本の若者には感じられないハングリーな熱意とやる気を感じざるをえなかったのである。